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Vol.5:八代目尾上菊五郎襲名披露公演 6月夜の部の見どころ

2025.04.23

松竹座 × まるやま・京彩グループ コラボ企画

着物を愛する貴女のための歌舞伎特別企画

八代目尾上菊五郎襲名披露公演

2025歌舞伎座『連獅子』親獅子の精=尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎、仔獅子の精=尾上丑之助改め六代目尾上菊之助(撮影:岡本隆史)
2025歌舞伎座『連獅子』親獅子の精=尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎、仔獅子の精=尾上丑之助改め六代目尾上菊之助(撮影:岡本隆史)

こんにちは。八代目尾上菊五郎襲名披露公演応援アンバサダー君野倫子です。 襲名披露公演は5月、6月歌舞伎座からスタートして、その後、全国各地の劇場をまわりながら新しい菊五郎、菊之助をお披露目していきます。その記念すべきスタートを目撃できたら、きっと将来、「あの時の菊五郎、菊之助を私はこの眼で見た」と誇りに思える日が来ると思います。歌舞伎役者は、生涯をかけて、何度も同じ役を演じます。その年齢のその役はその瞬間にしか見ることが出来ません。ぜひ、その瞬間を楽しんでください。 今回が最終回となりますが、6月公演の夜の部の見どころ、ぜひ楽しんでいただきたいポイントをお伝えしたいと思います。

歌舞伎十八番の内  暫(しばらく)

「初めてなんですが、どんな演目を観るといいですか?」と聞かれると、多くの歌舞伎役者も「初めての人にぜひ観てほしい」とあげる演目が、この「暫」。荒々しく豪快な演技、演出様式「荒事」の特徴や魅力がぎゅっと詰まっています。
まず主人公の鎌倉権五郎。
敵方に捕まった人を救うべく「しばらく〜しばらく〜」と叫びながら登場します。 隈取、鬢と大きな力紙、3メートルもある太刀、大きな凧のような武士の礼装・大紋、それはそれは驚きの大迫力のいでたちです。演出は極めて誇張的、様式的です。 隈取は「筋隈」と呼ばれる荒事の代表的なもの。血気盛んなエネルギー、怒りや強さを感じさせます。鬘は「5本車鬢」という独特な形で荒事スーパーヒーロー、力の象徴です。

そして、ユニークなキャラクターがたくさん登場します。 いつも目が釘付けになるのが「なまず」こと鹿島入道心斎の大迫力な蛸入道の羽織、着物にはサザエやヒトデなどの海の仲間たち。誰が考えたのか斬新すぎるデザイン。クールです。もう一人、初めて「女なまず」の赤と黒の衣裳を見た時、その美しいコントラストに心を奪われてしまいました。赤黒のコーディネートしたくなります。
そして、舞台後方にずらりと並ぶ赤いメタボな人たち。肉襦袢を着込んだ用心棒的なキャラクターです。衣裳さんの中に、肉襦袢専門部署があるとか。個性的なキャラがずらりと並び、斬新なデザイン、色のコントラストなど、見どころがたくさんあるので、ぜひ目を凝らして楽しんでください。

襲名披露 口上(こうじょう)

新たに襲名する役者とゆかりのある役者一同が客席に向かって挨拶するのが口上です。お芝居の役としてではなく、素の役者一人ひとりが語る襲名する役者とのエピソードやお祝いの言葉を聞ける貴重な機会です。その挨拶を聞いて、会場はほっこり温かい空気に包まれます。口上の舞台は、大道具なども襲名披露する役者に合わせて作られるので、舞台の背景の襖や欄間などに音羽屋にちなんだ文様や家紋がほどこされているはず。役者の裃の色も役者の家ごとに独自の色が決まっています。また、口上では頭を下げていることが多いので、女形さんの帽子の大きさ、髷の形もはっきり好みが現れます。6月の襲名披露公演の口上は夜の部のみです。ぜひ楽しんでください。

連獅子(れんじし)

「連獅子」も歌舞伎では定番、人気の舞踊劇です。親獅子が仔獅子を谷底に蹴り落とし、何度蹴り落とされてもはい上がる仔獅子。愛するがゆえの父親の厳しさ、それに応える子のけなげさが涙を誘います。特に襲名披露公演などでは、実際の親子が演じることが多く、親子の絆がよりリアル伝わってきます。見どころはなんと言っても毛振り。親獅子は白、仔獅子は赤の鬘は「頭(かしら)」と呼び、2メートルの長さ、3キロの重さのある毛を豪快に振り、舞い踊ります。この鬘はチベット高原に生息するヤクの毛で作られています。役者や家によって毛振りのやり方は違いがあります。演じる組み合わせも親子、親子3代獅子、4人獅子、祖父と孫など、さまざま。私が今まで観た「連獅子」は同じ演目でも、その家ごとに個性があってどれも見応えがありました。今回は音羽屋の新しい菊五郎と菊之助の親子共演。楽しみです。
2025歌舞伎座歌舞伎座『連獅子』狂言師右近=尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎、狂言師左近=尾上丑之助改め六代目尾上菊之助(撮影:岡本隆史)
2025歌舞伎座歌舞伎座『連獅子』狂言師右近=尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎、狂言師左近=尾上丑之助改め六代目尾上菊之助(撮影:岡本隆史)

芝浜革財布(しばはまのかわざいふ)

歌舞伎には、落語から歌舞伎に取り入れられた作品が多くあります。この「芝浜革財布」も落語「芝浜」という有名な噺を元に作られた演目です。江戸庶民の生活を描いた人情世話物。夫を思いやる妻の愛情、笑って泣ける作品です。セリフも難しい言葉はなく、とてもわかりやすいと思います。ただ、大酒呑みの貧乏な魚屋政五郎が主人公なので、残念ながら、いわゆる豪華絢爛な衣裳は全く出てきません。ですが、私個人的には、清五郎が店を構えるほどの魚屋になった最後の場面、女房おたつの縞の衣裳がかっこよくて、とても好きです。江戸時代の町人の女房。大晦日に正月の準備を終え、旦那と火鉢をはさんで福茶を飲みながら語り合っている光景。そんな今の私たちに続く江戸時代の日常が垣間見られます。

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*京彩合同観劇プラン(6月8日(日)、6月11日(水) 昼の部・限定各25名)
*たんす屋合同観劇プラン(6月22日(日) 、6月27日(金) 昼の部・限定各日25名)

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最後に

遅くなりましたが、八代目尾上菊五郎襲名、六代目尾上菊之助襲名、まことにおめでとうございます!

歌舞伎の歴史は400年以上。歌舞伎は口伝で親から子へ、弟子へと伝えられ今に続いています。私が歌舞伎にハマって歌舞伎座に通い出した頃、ふと、今、私が観ているこのお芝居、ほぼ同じような芝居を江戸時代の人々も観たかもしれない・・そう思ったら、今も芸を継承されて舞台に立っている役者さんに、また同じように今に技術を継承してくださったすべての裏方さんたちに「歌舞伎を見せてくれてありがとう!!!」と心から思ったことを今でも覚えています。
音羽屋も初代から400年。ほぼ歌舞伎そのものの歴史と同じです。八代目尾上菊五郎が、令和の今、そのバトンを受け取り、絶やすことなく継承し繋げていく瞬間を目撃できることを幸せに思います。
 
さて、5回にわたり、この連載を読んでくださった皆さん。本当にありがとうございました。もしお一人でも「歌舞伎に行ってみたい」という方の背中を押せたなら嬉しいです。
歌舞伎座でお会いしましょう!もし見かけたら、声をかけてくださいね。
 
君野倫子

君野倫子プロフィール


文筆家・日本文化ディレクター。2004年より着物や和をテーマに書籍、新聞、雑誌の執筆を始める。2010年から14年間、読売新聞夕刊で伝統工芸を紹介する連載を続ける。着物、手ぬぐい、歌舞伎、和雑貨などをテーマに日本文化に関する著書は20冊。日英版・日仏版に加え、海外の出版社からも出版された著書もある。2025年には新たに日本とロンドンの出版社からも出版予定。執筆以外にも、商品企画・イベント企画・デイレクションなども手がける。

以下、いずれも君野倫子著・市川染五郎(現・十代目松本幸四郎)監修

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