2026.01.22
きもので歌舞伎座まいりましょう!― 歌舞伎座案内④
目次
#きもので歌舞伎 デビュー応援企画
こんにちは。歌舞伎座をご案内するナビゲーターの君野倫子です。着物で歌舞伎座散策、何回かに分けて、外観から劇場内、歌舞伎座タワーまで一緒に巡りながらご案内する連載、今回が最終回となります。
最終回は、まず、知っておくと楽しめる歌舞伎ならではの観劇ポイントをご紹介。そして、歌舞伎座の上階部分、歌舞伎座タワー5階をご案内したいと思います。
歌舞伎ならではの観劇ポイント
歌舞伎という演劇が他の演劇と違う部分、言葉が難しいと感じても、歌舞伎には独自の決まり事があるので、観ているだけでいろいろわかる事があります。ここでは歌舞伎ならではの観劇ポイントを少しご紹介しましょう。
歌舞伎ならではの観劇ポイント
- その1独特の演出方法がある
- 歌舞伎には「けれん」と呼ばれる奇抜な演出があります。役者が宙を舞う「宙乗り」、舞台上で水を使う「本水」、一瞬にして衣裳が変わる「早替わり」「引き抜き」「ぶっ返り」と、ハッとするような楽しい仕掛けが楽しめます。
- その2化粧と隈取に注目する
- 歌舞伎の特殊なメイク「隈取」は、初代市川團十郎が始め、二代目團十郎が完成させたと言われています。隈取の描き方、主に紅・藍・茶をなど使う色で、その役の人物像を表しています。紅は正義のスーパーヒーロー。藍や茶色は、非道な適役、茶色は魔物や妖怪などを表します。意外に、わかりやすいので、化粧に注目です。
- その3舞台装置は物語の一部
- 歌舞伎は「大道具も芝居をする」と言われています。場面転換では、盆(回り舞台)を、回しながら次の場面へ移る際、役者が歩きながら背景が変わる様子は、映画のカメラワークのような躍動感を与えます。壁がバタンと倒れて一瞬で別の景色に変わる「どんでん返し」などは、驚きという「芝居」を観客に仕掛けます。物語のクライマックスで、大きな建物がバラバラに崩れ落ちる「屋台崩し」という演出があります。まさに観客の感情を揺さぶります。
- その4見えない事になっている人が登場する
- 歌舞伎には「そこに誰もいない」ものとして登場する黒い衣裳に身を包んだ「黒衣」が存在します。黒衣の役割は、役者が手を差し出した瞬間に扇を渡したり、使い終わった刀をサッと下げたりと小道具の受け渡し、舞台上で、一瞬で着替える「引抜(ひきぬき)」の際、糸を抜いて衣裳を剥ぎ取るのは黒衣の腕の見せ所です。黒衣は、雪の場面では全身白装束で雪衣、海や川の場面では全身水色で波衣と、背景に合わせて色を変えることがあります。
- その5役者ごとの『型』を楽しむ
- 歌舞伎が何度見ても飽きない最大の理由は、まさにこの「型(かた)」の違いにあります。同じ演目、同じ役であっても、演じる家によって演出や解釈が違うのです。観客は「役者個人の演技」だけでなく、その背後にある「何代にもわたる家の歴史」を同時に観ることができるのです。時空を超えた楽しみ方ができるのは、歌舞伎ならではの醍醐味です。
この他にもまだまだたくさん歌舞伎ならではのアレコレがあるのですが、また、皆さんにそんなお話ができる機会が持てたら嬉しいです。
さて、歌舞伎座ご案内の最後は歌舞伎座タワー5階です。
09. 歌舞伎座タワー5階・寿月堂
5階、屋上庭園に面して佇むのが、創業170年余の海苔の老舗「丸山海苔店」が運営する日本茶喫茶「寿月堂」。建築家・隈研吾氏が設計を手掛けたという3,000本の竹を使った空間は都会のオアシスです。庭園を眺めながら、お茶をいただくと、そこはまるで自然の中にいるかのよう。
煎茶、玉露、抹茶などの日本茶と上質な和菓子のセット、抹茶モンブランや抹茶クリーム白玉ぜんざいなど、抹茶をふんだんに使ったスイーツも楽しめます。また、極上海苔で食べる和のサンドウィッチ、打ちたて抹茶そばなど軽食メニューも人気です。歌舞伎座界隈にはカフェが少ないので、とても貴重な空間です。
日本茶喫茶・茶葉の店
寿月堂 銀座 歌舞伎座店
東京都中央区銀座4-12-15
歌舞伎座タワー5階
営業時間:10:30 – 17:30(喫茶L.O. 17:00)
https://maruyamanori.net/sp/kabuki-za/store/

10. 歌舞伎座タワー5階・屋上庭園
寿月堂から見えるのが、そこは都心とは思えない静寂な屋上庭園。歌舞伎座の大屋根の上に位置する庭園で、観劇の後、静かに余韻に浸りたい時はもちろん、銀座散策の途中にひと息入れたい時にぴったりの空間です。先人の碑や河竹黙阿弥の家に置かれていたと言う石灯籠と蹲踞(そんきょ)が設置されています。歌舞伎座の屋根瓦が間近に見ることができるのも醍醐味です。心安らぐひとときを過ごせる、四季の移ろいを感じられる癒しの空間です。

11. 歌舞伎座タワー5階・着物ショップ「都粋」歌舞伎座店
歌舞伎座内という特別な立地を活かし、歌舞伎観劇にふさわしい着物選びの相談からお手入れ相談、着付けサービス(有料)、着物教室と幅広く対応してくれる心強い存在。観劇の前後に立ち寄れば、スタッフとの着物談義も弾み、初心者から上級者まで着物ライフを豊かにするアドバイスが得られます。
<きもので歌舞伎コーディネート④>
さて、この連載では、私がスタイリングしたコーディネート(秋冬カタログでモデル着用)、また都粋各ショップが提案するコーディネートを順番にご紹介していきます。
優しい淡黄の地に葵の飛び柄が軽やかに舞うこの小紋は、着る人に自然な品格と親しみやすさを与えます。合わせた名古屋帯は、淡いグリーン、パープル、ブルー、ベージュの優しい四色の丸紋が立体的に浮かび上がる繊細な仕上がり。淡黄色の着物と絶妙なハーモニーを奏でます。
派手すぎない柔らかい上品さが年齢問わず、お茶席、観劇、美術館巡りなど、文化的なお出かけにぴったり。一枚あると重宝する万能コーディネートです。
Styling : 君野倫子
コーディネート小物
- 帯揚げ:「丹後ちりめん吉祥帯揚げ」青磁
- 帯締め:「五嶋紐 畝打ぼかし帯締め」深紫
- バッグ:「菱屋 カレンブロッソ バッグ」ブロンズグレー
淡い群青色に咲き誇る小花模様のこの小紋は、爽やかなブルーが肌映りを良くし、清々しい美しさと親しみやすさをもたらします。合わせたクリーム色地の華紋名古屋帯は、淡群青色との相性よく、古典柄でありながら全体に軽やかな印象を演出します。
観劇はもちろん、様々なシーンで活躍する万能コーディネート。重すぎず軽すぎない絶妙なバランスが、着物に慣れない方にも安心感を与え、ベテランの方には着回しの効く頼もしい一枚として重宝します。
Styling : 君野倫子
コーディネート小物
- 帯揚げ:「丹後ちりめん吉祥帯揚げ」赤白橡
- 帯締め:「五嶋紐 鹿の子三分紐」梅紫
- 帯留め:「デザインパール帯留」パール
- バッグ:「低反発クッション草履」パールブルー
君野倫子プロフィール
文筆家・日本文化ディレクター。2004年より着物や和をテーマに書籍、新聞、雑誌の執筆を始める。2010年から14年間、読売新聞夕刊で伝統工芸を紹介する連載を続ける。着物、手ぬぐい、歌舞伎、和雑貨などをテーマに日本文化に関する著書は20冊。日英版・日仏版に加え、海外の出版社からも出版された著書もある。2025年には新たに日本とロンドンの出版社からも出版予定。執筆以外にも、商品企画・イベント企画・ディレクションなども手がける。
- 以下、いずれも君野倫子著・市川染五郎(現・十代目松本幸四郎)監修
- 「かわいい歌舞伎の衣裳図鑑」(小学館) https://amzn.to/3DpQqDi
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