2025.11.25
きもので歌舞伎座まいりましょう!― 歌舞伎座案内③
#きもので歌舞伎 デビュー応援企画
こんにちは。歌舞伎座をご案内するナビゲーターの君野倫子です。着物で歌舞伎座散策、何回かに分けて、外観から劇場内、歌舞伎座タワーまで一緒に巡りながらご案内する連載3回目は、歌舞伎座の上階部分、歌舞伎座タワーをご案内したいと思います。
そして、「歌舞伎って他の演劇や舞台とはマナーが違うの?」と不安に思われている方も多いと思うので、今回は最後に「歌舞伎のマナーとエチケット」をご紹介します。
さて、歌舞伎座タワーの4階には「歌舞伎座ギャラリー回廊」、 5階には「歌舞伎座ギャラリー」「五右衛門階段」「屋上庭園」「寿月堂」「きもの都粋・歌舞伎座店」があります。
今回は、4階の「歌舞伎座ギャラリー回廊」5階の「五右衛門階段」をご紹介します。
07. 歌舞伎座タワー4階回廊
明治以降の第一期から第四期までの歌舞伎座の精巧な建築模型がずらりと並ぶ貴重な展示空間です。歌舞伎座が関東大震災や戦火を乗り越え、いかにして現在の美しい姿に辿り着いたのか。明治から平成までの劇場の変遷がひと目でわかります。また、4階の廊下に沿って「想い出の歌舞伎俳優」のコーナーでは、過去の名優たちの写真も展示され、歌舞伎の歴史を振り返る事ができる回廊です。
歌舞伎という文化が災害や戦争など、さまざまな困難の中でも、その灯火を消すことなく、今の私たちが観ることができる事の幸せと培われてきた歴史の重みを肌で感じられる空間です。
08. 歌舞伎座タワー5階・五右衛門階段
屋上と4階回廊へ続く朱色の階段は「五右衛門階段」と呼ばれ、歌舞伎座の大屋根を一望できる絶景スポット。石川五右衛門の「絶景かな、絶景かな」の名台詞が自然と思い浮かびます。屋根瓦の中に1枚だけ「反転した鳳凰」があるので探してみてください。知る人ぞ知る、着物姿が映える撮影スポットです。ぜひ、ゆっくりと歩いてみてください。

さて、ここで歌舞伎を観に行く時の基本的な観劇マナーとエチケットをお伝えしておこうと思います。
観劇のマナーとエチケット
歌舞伎をより心地よく楽しむためには、観客一人ひとりのマナーが大切です。でも、他の演劇やミュージカルとどう違うのか、初めての方でも安心して観られるよう、基本的なエチケットをまとめました。
観劇のマナーとエチケット
- 着席したら携帯電話・スマートウォッチなどの電源を切りましょう。
- ドレスコードはありませんが、下駄はNGです。
- 上演中は静かに鑑賞し、おしゃべりやスーパーの袋などをいじる音を立てないようにしましょう。
- カメラ・動画撮影・録音は禁止されていますが、最近は一部、撮影OKになる事があります。その場合は、係の指示に従って撮影しましょう。それ以外の記念撮影などは幕間やロビーで。
- 基本的に、歌舞伎にはカーテンコールはありません。終演後は速やかに退場しましょう。
- 拍手は見得を切ったあとや場面の切れ目で自然に。花道の引っ込みで手拍子などもありません。
- 幕間に座席でのお食事や飲食は可能ですが、においの強い食べ物は配慮しましょう。
- 帽子は視界を遮るため脱ぎましょう。頭の上のお団子や盛り髪スタイルもやめましょう。
- 客席へ遅れて入場する場合は、案内係の指示に従い、場面の切れ目で静かに席へ。演目によっては開演するとしばらく入場できないものもあります。
- 体を前に乗り出しての観劇はNGです。
- 歌舞伎での掛け声(大向こう)のタイミングはお芝居にとって、とても重要です。基本的に、3階席にいる大向こうさんが掛け声をかけます。初心者の方は注意しましょう。
- 花道は休憩時間などでも横切ったりしてはいけません。
観客の心遣いが舞台をより輝かせます。気持ちよい時間を共有することが、歌舞伎を観る醍醐味です。
<きもので歌舞伎コーディネート③>
さて、この連載では、私がスタイリングしたコーディネート(秋冬カタログでモデル着用)、また都粋各ショップが提案するコーディネートを順番にご紹介していきます。
漆黒の地色に、上品な葵の飛び柄が舞い散るこの小紋。格調高い黒地が、着る人に凛とした気品を与え、散りばめられた葵の柄が程よい華やかさを添えます。合わせた白地のアラベスク文様の帯は、漆黒の着物を際立たせ、全体にメリハリの効いた上品な装いです。
歌舞伎鑑賞、美術館、お茶会など「きちんと感」が求められるシーンで大活躍。派手すぎず地味すぎない絶妙なバランスは、年代問わず、着る人の魅力を最大限に引き出してくれるセットです。
Styling : 君野倫子
コーディネート小物
- 帯揚げ:「ふくれ織七宝帯揚げ」紺
- 帯締め:「綾竹貴船組三分紐」黒
- 帯留め:「デザインパール帯留(花と葉っぱ)」
- バッグ:「龍村美術織物 横長利休バッグ」果葉吉猿文(かようきちえんもん)
君野倫子プロフィール
文筆家・日本文化ディレクター。2004年より着物や和をテーマに書籍、新聞、雑誌の執筆を始める。2010年から14年間、読売新聞夕刊で伝統工芸を紹介する連載を続ける。着物、手ぬぐい、歌舞伎、和雑貨などをテーマに日本文化に関する著書は20冊。日英版・日仏版に加え、海外の出版社からも出版された著書もある。2025年には新たに日本とロンドンの出版社からも出版予定。執筆以外にも、商品企画・イベント企画・ディレクションなども手がける。
- 以下、いずれも君野倫子著・市川染五郎(現・十代目松本幸四郎)監修
- 「かわいい歌舞伎の衣裳図鑑」(小学館) https://amzn.to/3DpQqDi
- 「歌舞伎のびっくり満喫図鑑」(小学館)https://amzn.to/3F9MIOV
- 「バイリンガルで楽しむ 歌舞伎図鑑」(小学館)https://amzn.to/3Fc8qlg
- 「歌舞伎はじめて案内手帖」(二見書房) https://amzn.to/3XzNk6t

